― 相談できない立場で、一人で考え続けてきた内省と支え ―
事業承継でストレスを感じている方へ。
家族経営の中で、
「なぜこんなにしんどいのか」と感じることはないでしょうか。
はじめに
家族経営で事業承継を進めていると、
「親と経営方針が合わない。」
そんな悩みに直面することがあります。
新しいことに挑戦したい。
会社を変えていきたい。
時代に合わせて経営を見直したい。
そう思って提案しても、
「今までこれでやってきた。」
「そんなことをしなくても会社は続いてきた。」
と言われ、話が前に進まない。
私自身も、この問題に何度も向き合ってきました。
当時は、
「なぜ分かってもらえないのだろう。」
「自分の考えが間違っているのだろうか。」
と苦しんでいました。
しかし今振り返ると、
問題は「親が悪い」「自分が悪い」ということではなく、
経営方針が違うのは、
それぞれが違う時代を生きてきた結果だった
と考えられるようになりました。
この記事では、二代目経営者として親と経営方針が合わない理由と、その向き合い方について、自分自身の経験を交えながら整理してみます。
親と経営方針が合わないのは「価値観」ではなく「役割」が違うから
結論から言えば、
親と経営方針が合わないことは珍しいことではありません。
なぜなら、
親は「会社を守ってきた人」。
二代目は「これから会社を残していく人」。
同じ会社を見ていても、
見えている景色が違うからです。
先代は、
倒産させないことを第一に考えます。
一方、後継者は、
未来に向けて変化することを考えます。
つまり、
目指しているものは同じでも、
そこへ向かう方法が違うのです。
「変えたい」と「守りたい」は対立ではない
若い頃の私は、
親が変化を嫌っているように見えていました。
「なぜ新しいことをやらないのだろう。」
「もっと挑戦すればいいのに。」
そう思うこともありました。
しかし今振り返ると、
親は挑戦を否定していたわけではなく、
会社を守る責任を優先していただけだったのだと思います。
会社を何十年も経営してきた人は、
成功だけでなく失敗も経験しています。
だからこそ、
慎重になります。
一方で後継者は、
未来を作る立場です。
変えなければ会社は成長しないという危機感があります。
つまり、
「守りたい」
と
「変えたい」
は対立ではなく、
どちらも会社を思っているからこその考え方なのです。
会社に必要だと思うことをこちらが伝えても、
当時は父が反対しているようにしか見えませんでした。
しかし今思えば、
父は会社を守るために慎重になっていただけだったのかもしれません。
二代目経営者がストレスを感じる理由
親と経営方針が合わないと、
二代目は強いストレスを感じます。
その理由は、
「正しいと思うことができない」
からです。
親の言うことも理解できる。
自分の考えにも理由がある。
どちらにも正しさがあるからこそ、
簡単に割り切れません。
さらに、
親子だから感情も入ります。
経営会議なら終わる話でも、
親子関係は会社の外まで続きます。
そのため、
仕事の議論が家庭にも影響することがあります。
この境界線の曖昧さが、
家族経営ならではのストレスなのだと感じています。
「家では仕事の話をしない」
そう決め事をしても、
時として議論の収まりがつかなく家まで持ち込むこともままありました。
そんな時は、
どこに気の置き処を求めていいかわからなくなることもあります。
「理解してもらえない」が一番苦しかった
私が一番苦しかったのは、
意見が違うことではありません。
理解してもらえないと思い込んでいたことでした。
「どうして分かってくれないのだろう。」
「もっと話を聞いてほしい。」
そんな思いばかりが膨らみ、
本来考えるべき会社の未来よりも、
「理解されたい」という感情に意識が向いてしまっていました。
今振り返ると、
その状態では冷静な判断はできません。
経営方針の話をしているようで、
実際には感情の話になっていたのだと思います。
話の中身は、
「方法論の『提案』」
『方針の「確認」』であるはずなのに、
そこに些細な仕事の異論や後付があるだけで感情的に反応してしまうこともありました。
正解を求めるほど話し合いは難しくなる
親との話し合いで学んだことがあります。
それは、
「正解を決めよう」
と思うほど、
話し合いは難しくなるということです。
経営には、
絶対の正解はありません。
だから、
「どちらが正しいか」
ではなく、
「会社にとって今何が必要か」
という視点を持つようになりました。
すると、
少しずつ感情よりも目的を共有できる場面が増えていったように思います。
特に図式化・表化して伝える様にすることで、
情報や計画のシェアはスムーズにいくようになりました。
恐らく言語のみのやり取りでは、
頭の中のイメージが違うもの同士なら尚更脳を駆使する分、
疲労となってストレスも感じやすくなるのかと思っています。
相手を変えるより、自分の伝え方を変える
以前の私は、
親に考え方を変えてもらおうとしていました。
でも今は、
相手を変えることよりも、
自分の伝え方を変える方が現実的だと思っています。
例えば、
いきなり大きな改革を提案するのではなく、
小さな改善から始める。
数字や実例を示して説明する。
親が大切にしてきたものを否定しない。
そうした工夫だけでも、
話し合いの雰囲気は変わることがあります。
もちろん、
それでも意見が合わないことはあります。
でも、
「理解してもらえない」
という苦しさは、
以前より少なくなりました。
事業承継では「親との関係」も経営の一部
事業承継では、
売上や利益だけではなく、
親との関係そのものが経営課題になります。
その関係が悪いからではありません。
家族だからこそ、
仕事と感情を完全に切り離せないからです。
だから私は、
親との関係を
「解決すべき問題」
ではなく、
「長く付き合っていく関係」
として考えるようになりました。
その方が、
自分自身も少し楽になれたように思います。
その為にしている工夫として、
- 基本的に家では仕事の話はしない。
したい場合は、「仕事の話ししていい?」
と断りを入れて体制を整えてから話し出す。 - 一日の内、
仕事と家庭の時間が大半である以上、
そうでない空間(趣味や交友)を意識的に作る様にする。 - 伝えたいことが感情的になりそうであれば尚更、
それを事前に紙に書き落とすようにする。
等を心がけるようにしてます。
親と経営方針が合わないことは自然なこと
親と経営方針が合わないことは、
決して珍しいことではありません。
それぞれが違う時代を生き、
違う責任を背負ってきたからです。
だからこそ、
「どちらが正しいか」
ではなく、
「会社の未来にとって何が必要か」
という視点を持つことが大切だと私は感じています。
私自身、
今でも意見が違うことはあります。
それでも、
相手を変えようとするのではなく、
お互いの立場を理解しようとすることで、
以前より落ち着いて向き合えるようになりました。
もし今、
親との経営方針の違いに悩んでいるのであれば、
まずは
「親も会社を守ろうとしている」
という視点を持ってみてください。
それだけでも、
見える景色が少し変わるかもしれません。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
事業承継のストレスは、
能力や性格の問題ではなく、
構造によって生まれるものです。
もし今しんどさを感じているのであれば、
それはあなたの問題ではなく、
環境によるものかもしれません。
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〇私自身、この苦しさを長い間「自分の問題」だと思っていました。
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